なぜわれわれは歯周病にかかる?
2021年1月4日 (月)
歯周病菌は20歳前後の口腔に唾液感染し、潜伏します。そして、歯周組織とバイオフィルムの拮抗が崩れたとき、歯周炎を発症させます。今回はなぜ歯周病菌は感染·定着するのかについて、細菌検査とあわせてご紹介します。
①人間土管ー「口は体の外」だった!
②錠剤細菌叢への歯周病菌の定着
もっとも強力な歯周病菌P gingivalis (以下Pg菌)は20歳前後の人の口腔内に定着します。成人人口の約半数からこの菌が検出されることから、Pg菌は口腔常在菌と考えられるようになっています。歯周病菌が常在菌であるという事実には大きな意味があります。多くの人が歯周病発症のリスクをもっているということです。歯周病菌の感染後しばらくは、感染を受けた人(宿主)の年齢が若いせいもあって、長期にわたって症状は現れません(不顕性感染)。しかし、歯周病菌は絶えず宿主の状態を観察しています(日和見)。中には生涯にわたって不顕性感染のままの人 もいますが、多くは口腔清掃不良や加齢などの理由で、歯周組織と細菌バイオフィルムの拮抗バランスが崩れたとき、歯周病は発症します(内因感染:常在菌による発症のこと)。宿主や歯科医療従事者は、歯周病の発症を防ぐために片時も気を緩めず歯周病菌との拮抗バランスを保ち続けなければなりません。その一方で歯周病菌も常在菌であり続けるためには、免疫からの攻撃や低栄養を避けなければなりません。宿主と歯周病菌はそれぞれもてる力を尽くし、拮抗状態を保ちながら静かなる戦いを長期にわたり継続しているのです。
③歯周病発症ー出血が発症のサインであるわけー
Red complexとよばれる歯周病菌トリオ(Pg菌と仲間2菌種)には栄養素として鉄が不可欠です。Pg,菌は、ヒト血液中のヘモグロビンからヘミン鉄を手に入れます。出血がない場所ではPg菌はヘミン鉄を摂取できません。この栄養不足の状況下では、Pg菌が感染しても菌を増やすのは簡単ではないため、歯周炎は起こりません。しかし、この低栄養状態をじっと堪え忍び、Pg菌は人知れず歯周炎発症のときを待っています。やがて、口腔清掃不良あるいは免疫力の低下によって歯周組織に炎症が起こると、歯周ポケット内面(内縁上皮)が炎症を起こし深く傷ついた状態になります。そして、露出された毛細血管から血液が歯周ポケットを満たしたとき、血液中の鉄分とタンパク栄養分を得て、P.g菌は一気に増え、バイオフィルムの病原性を大幅に高めます。歯周病菌と歯周組織の拮抗が崩れたときこそが歯周炎発症の瞬間です。「あれ?歯を磨くと血が出るようになった」は、歯周病発症のサインです。
④歯周病原性を知るには細菌検査は欠かせない!
歯周病は感染症です。しかし、red complex感染による感染性歯周炎とred complex感染してないにもかかわらずお口の環境が悪いがため起こる「不潔性歯周炎」は別の病気と考えてください。プラークの量が多いだけでは、red complex感染による歯周病発症リスクが高いとは言えません。毒性の弱い菌でも、菌の量が増えれば歯周病(不潔性歯周炎)を起こします。しかし、red complex感染歯周病に比べて容易に進行を食い止めることができます。
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