歯周病が原因で動脈硬化が起こりやすくなる
2019年3月18日 (月)
動脈硬化とは、動脈の内側で血液中の脂肪や白血球などが粥状にくっついて溜まり、血管が硬く狭くなることです。
溜まったものが壊れると血栓を作り、完全に血管を塞いでしまうことがあります。冠動脈で発生すれば心臓発作、脳で発生すれば脳卒中になり、がんに次ぐ日本人の死因第2位といわれています。
歯周病と動脈硬化症の両方にかかっている人は多いです。
動物実験で歯周病菌が動脈硬化を起こす仕組みが解明されています。
しかし、人間の体内でも同じ様に起きるのかどうかはまだはっきり解明されていません。
血液中の炎症性物質の数値が高いと動脈硬化が起きやすくなります。
歯周病の患者さんは全身が軽い炎症状態にあり、炎症性物質の数値が少し高くなるため動脈硬化が起こりやすくなると考えられています。
稀に、動脈硬化を起こした血管から歯周病菌が見つかることもありますが、歯周病菌が動脈硬化の原因となるかまでは解明されていません。
しかし、動物を使った最新の研究では、歯周病菌を飲み込むと腸内細菌の構成が変化し、腸の壁が弱くなるために全身の臓器に細菌の影響が及ぶということが判明しました。
これらのことから歯周病が原因で動脈硬化が起こりやすくなるのかもしれませんが、歯周病を治療したら動脈硬化が減るのかどうかは研究不足でまだはっきりしていません。
歯周病から全身へもたらす影響とは
歯周病が全身へもたらす影響は、今のところ次の3つの経路をとると考えられています。
①血液から、②歯周組織から、③腸の壁から
これらは相反するものではなく、同時に起こることもあります。
①血液から
歯周炎の組織から産生された炎症性物質は、血液中に入って全身を巡り、肝臓に急性期反応を起こします。結果、動脈硬化や子宮内の炎症に関わるといわれているCRP、フィブリノーゲン、血清アミロイドAが産生されます。
②歯周組織から
歯周病原細菌が直接歯組織から体内へ侵入することもあります。P.g.菌は血中の白血球や動脈硬化の血栓の中で見つかりました。Fusobacterium nucleatumは胎盤の中で発見され、早産や妊娠高血圧腎症と関連しているとの報告があります。
③腸の壁から
最近発表された新しい仮説では、私たちが毎日口腔内から飲み込んでいるP.g.菌が、腸内細菌の菌叢を変化させることが判明されました。
その結果、腸の壁の透過性が高まり、様々な物質が通り抜けやすくなります。
細菌が出す内毒素が腸の壁を通り抜けて血液中に入ることにより、全身的な炎症となります。
様々な全身の病気が歯周病と関係していると言われています。どのように歯周病と他の病気が繋がるかの経路も解明されてきています。
歯周病が全身に炎症を起こすことも問題ですが、歯周病が原因で歯がグラグラして物をしっかり噛めなくなること自体も全身に悪影響を及ぼします。
お口の中で起こる歯周病は、全身の病気に繋がります。お口の健康を保つということは、全身の健康に繋がります。
歯周病治療を疎かにしてはいけません。痛みなどの自覚症状が少ないために放置してしまいがちですが、歯周病は治療をすると改善する病気です。
定期的にメインテナンスを受けてお口の健康と全身の健康を保ちましょう!
カテゴリー: 歯の豆知識