歯周病と糖尿病
2020年4月27日 (月)
日本全体の糖尿病人口は、予備軍も含めて4000万人。40歳以上で糖尿病と予備軍の人は、男性で2人に1人、女性で3人に1人。
糖尿病はもはや誰にとっても他人事ではありません。
そして、最近の調査では、日本人の成人の約8割が歯周病にかかっていることも明らかになりました。
糖尿病と同じく歯周病も立派な「国民病」です。
その糖尿病と歯周病の間には、コインのような密接な関係があります。
42歳男性のAさんは、糖尿病治療のため、30代の頃から大学病院に通院していました。ヘモグロビンA1cの値は7パーセント前後で安定していましたが、39歳の時に11.4パーセントまで急に悪化したため、糖尿病内科の外来でインスリン治療を始めました。その後も10パーセント代が続いたため入院して治療することになりました。入院当日、研修医がAさんに問診したところ、「毎朝、起きると歯ぐきからの出血で枕が赤く染まる」ことがわかりました。「それは大変!」と思いすぐに歯科口腔外科に紹介しました。すると重度の歯周病であるとのことでした。上と下の2回に分けた歯周病の治療が行われました。Aさんは汚れたお口の中を、歯科衛生士さんにピカピカにしてもらったのです。
入院当初はインスリン注射を4回打ち、入院食で食事制限をしても血糖値はなかなか下がりませんでした。ところが歯周病の治療を終える頃から、Aさんの血糖値はスルスルと下がり、インスリン注射の量も減っていき、退院2日前にはついに0に。飲み薬1種類だけで退院できたのです。さらに驚いたのは、退院後のヘモグロビンA1cの値です。入院当初は10.5パーセントだった値が退院1ヶ月後には7.8パーセントまで大きく下がったのです。糖尿病の薬1種類で下がるのは普通0.8パーセントぐらい。1ヶ月で値が1〜2下がれば上出来で、3近く下がるのは専門医も驚きです!
血糖値、ヘモグロビンA1cとともに、Aさんの検査データでもう1つ、改善した値があります。退院後、血液中のCRP(C反応性タンパク)という物質の値が半減したのです。CRP検査は体の中で起きている炎症の度合いを見るために行われます。AさんのCRP値は入院日には0.3㎎/㎗で歯周病が進行していると、このくらいの値になります。それが退院1ヶ月ごには0.16㎎/㎗と半分以下に下がったのです。
このことから歯周病の治療により体内の炎症が改善し、それによって血糖値が低下したと考えられます。入院して行った食事療法や運動療法の効果もあったのでしょうが、劇的な改善のきっかけになったのは、歯周病治療だったのです。
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