むし歯ってなぜできる?むし歯になりやすい人、なりにくい人!!
2019年1月12日 (土)
むし歯菌の出す酸で、歯を作っているイミネラルの結晶が、化学反応を起こして崩れ、唾液の中に溶け出てしまうことを「脱灰」といいます。脱灰がずっと続くと歯の密度が粗くなってついにはむし歯ができてしまいます。
「化学反応」といってもイメージが湧かないかもしれないので、たとえ話をしてみましょう。
中学校の理科の実験で、卵の殻を塩酸に浸けてその様子を観察したことがあったでしょう。
あのとき強い酸によって、卵の殻がどんどん溶けましたね。卵の殻のミネラルの結晶が酸と化学反応を起こしたからです。
要するに、あれに似た現象のグッとゆるやかなものが、歯と虫歯菌の出す酸のあいだで起きているということです。
歯はカルシウムイオン、リン酸イオン、水酸化イオンという3つのイオンが結晶化してできています。
唾液にもこの3つのイオンがタップリ溶け込んでいます。
この結晶は潜在的にはアルカリ性の物質です。
一方、歯にプラークが付きむし歯菌がたくさんいて、そこへ砂糖が入ってくると、酸をさかんに作るのでプラークの中が酸性になります。
※プラークとは?
プラークとは歯の表面に付着している細菌の塊です。白色または黄白色をしているので目では確認
しにくいですが、舌で触るとザラザラした感触があります。
酸性になったプラークは、バランスをとるため、当然ながらこれを中和しようとします。
でも酸を中和するには、どこかからアルカリ性物質を持ってこなければいけません。
そこで足りない分は、歯の中にあるアルカリ性のイオン(水酸化物イオン)をもらって中和するのです。
これが「脱灰」という現象で、この状態が長く続くと歯が溶けてスカスカになり虫歯ができてしまいます。
ただ、理科の実験では卵の殻は溶ける一方でしたが、唾液の力というのは本当に素晴らしく、酸を中和してくれますし、プラークを取り除いて口の中の環境を良くしてあげると、唾液に溶け出しているイオンをまた結晶化させて歯に戻し修復してくれるのです。
むし歯になりやすい人、なりにくい人がいる!?
Q、痛くなって歯医者さんに行くたび他のむし歯も見つかって困っています。歯が弱いのは元からの体質
で仕方がないのでしょうか。
A、むし歯のなりやすさは、唾液の量や質、歯の耐酸性の違いだけでなく食習慣や歯磨き習慣にも影響
されます。
むし歯には、確かになりやすい人となりにくい人がいます。
生まれつき歯が弱いから虫歯になりやすいのか、それとも他に原因があるのか、この解明は、むし歯予防永遠のテーマであり、常につきまとう問題です。
まず、むし歯の原因には、もともとの体質的な要因と、そうでない要因とがあります。
今回はこの2つを区別してお話を進めていきましょう。
もともとの体質とはなんなのか………歯の質、そして唾液の質のことです。
唾液が十分に分泌されているのか、唾液に酸を中和する力(緩衝能)があるのかは、再石灰化がしっかりと進み、脱灰した歯が修復されるかどうか、つまりむし歯ができにくいかどうかのカギを握る重要な要素です。
よくむし歯ができて、悩んでおられる方は、一度歯科医院で「唾液検査」を受けてみるといいでしょう。(※当院にも簡易唾液検査があります。)
それから歯の質については、私が永久歯のエナメル質の耐酸性について抜去歯で調べてみたところ、個人差が4倍程あり、歯が溶け始める酸性度も、pH5.0からpH5.8と、大きな違いがあることがわかりました。
とはいえ、患者さんの生きた歯を、検査のために抜き、酸に強いか弱いかを調べるわけにはいきません。
ですから、患者さんの歯が実際にどれくらいの強さなのかを調べることは現状では残念ながらできないのです。
唾液検査で問題がなく、フッ素配合歯みがき剤をつかって歯磨きをしているのに、むし歯ができるというのでしたら、歯の質が弱い可能性はあると思います。
ただ、はじめにお話ししたように、むし歯になる要因は、もともとの体質以外にもいろいろあります。
まず大きな要因となるものが食習慣です。
おやつをいつまでもダラダラ食べたり、ずっと飴を舐めていると、口の中が頻繁に酸性になり、脱灰がどんどん進み、再石灰化が追いつかないためにむし歯になりやすくなります。
また、口の中の虫歯菌の数、そして歯磨き習慣も大きく影響します。
磨いていても、いつも同じところにプラーク(歯垢)が残っていると、常にそこに酸が溜まるため、むし歯ができやすくなります。
食習慣を見直したり、飲み物をジュースからお水やお茶に変えたり、プラークコントロールをレベルアップしたり、フッ素をより積極的に利用するなど、むし歯を予防していくための引き出しはいろいろあります。
予防に熱心な歯科医院で相談し、食事指導、歯みがき指導、定期検診でのクリーニングやフッ素塗布など、あなたのためのむし歯予防プログラムを組んでもらいましょう。
「私は歯が弱いから」とあきらめないで、歯科のプロと一緒に歯を守っていきましょう。